4月5日
何時の間にか観音は自分で大きな草履を履いて玄関口まで行っていた。靴に比べれば履き易いだろうが、自分一人で履いて出て行こうと立っていた。又、一つ新しい事が出来たね。
4月8日 晴れのち曇り一時小雨。 降誕会
朝から甘茶の香り一杯に広がる。訪れる人は多くは無いが、年に一度の花御堂が訪れる方々を迎える。
今年は桜も早く散ってしまい、菜の花を足元に配された釈迦像が御堂の中で人々を迎えた。
4月13日 晴れ。
「ご免ください。」と聞きなれない声。初めてお訪ねしたのですがと、薫を訪ねる町内の壮年男性。方丈の弟、つまり薫の叔父上の同級生とおっしゃる方であった。
同じく同級生で、カリフォルニア在住の方にメールを送りたいのだが上手く行かず、彼の方からの手紙には
「海蔵寺の薫さんに時折 忠海の様子などをメールして頂く」とあったのでお祭りで出たついでにと
お見えになったのだ。
1週間位前だろうか、薫がウイルス付きのメールが来た事で騒いでいた。その相手らしく、今現在連絡が取れないのは、ウイルスの為では無いかと説明していた。だが、そのメールにも「上手く送れないので、もしかしたら何か日本に送れない状況に成っているのかと思い試しに薫さんの処へ送ってみました。」と成っていた事で一概にウイルスでも無さそうだとなり、教えを請いたいとその男性が言い出した。上がっていただいたらとお誘いしたが、「直ぐ失礼するから」と玄関で話が続いた。その内に「メールが通じ無いので、様子を確かめたいと思って、国際電話で001で掛けたら掛けられなくて、人に尋ねたら国番号の1を入れるのだと教わったのだが、001-1-XXX・・・としても通じなかったし、エアーメールの宛名書きが出来そうにない」と明かされた。薫が「メールアドレスの記入されていたお便りは手書きですか?」・・・「電話会社はどちらと契約してらっしゃいますか?KDDIでなければ、001で始まらないのですよ。」・・・となり、終わりそうに無い。結局、玄関でお茶を入れる。
お帰りに成られてから、薫がシミジミ 「出来るようになった人からすると、何故って思うような事って、何処にも説明が出てないし、そういう処で躓くと教えられる人がいないのよねぇ~」と言う。そう言えば 薫がHPの開き方を教えたケースも、アドレスを入力した後に『Enterキーを押す』と言うのが分からず、ジッと待っていたと言うものだった。メールをプレビューウインドで見ながら、選択が出来るのに消去ができず
メールの返信も打てないと救いを求めていたケースもあったな。
4月14日 晴れ。
お祭りのイベントとして、出張ミニ動物園が出来ていたので観音は大喜び、何度か見に行った。
日差しの強烈な時間に同行した薫は、動物達をとても気の毒がっていた。蒸れ上がりそうな小さなテントの中で小刻みの息をしているワラビー(小型のカンガルー)の日よけパラソルが、全く役に立たない位置に立っているのを見た薫は、管理人を探しに行く。彼が柵の中に入ると、ワラビーは小さなテントを飛び出して慌てて駆け回る。彼がパラソルの位置を変えてみても やはり、柵から離れて置かれたテントにその影を落とす事がどうしても出来ない。出て来た彼は、「何時もこんなもんですよ。大体が、夜行性なので昼間は寝てるんです。呼吸が速いのはやっぱり緊張があるんですよ。スーピーカーの大きな音はするしね。自然にいる動物をそのままこう言う環境に連れて来たら、死んでしまうんです。だから、この子は僕が人口哺乳で育てたんですよ。最初は、あれでも少しは寄ってきたりして懐いてたけど今は寄ってこないし、昼間はもうああして寝てるんです。・・・それに、これが彼女の仕事ですから。」と言った。その場は、観音と動物達を楽しんで見ているかのように見えた薫だが、後から憤慨していた。
「仕事って言えばしょうがないって考えると思っているんだわ。ワラビーの仕事??じゃ、その収益はワラビーの為に使用されてるとでも言うの?あのワラビーはこうして働いて、故郷のワラビーの生息地を購入ているのですよとでも言うつもりなのかしら? ものが言えないと思ったら、何しても良いと思ってるんだから
全く」と幽雪に抗議!講義してるのか?公儀したのか?
4月15日 朝方から雨。
午睡をしていた観音が雷の「ドドッドードン」と言う音に目を覚ます。事態がつかめないようで、飛び起きて「ワァ~」と飛んで来た。「雷よ!驚いて目が覚めちゃったのね。大丈夫よ。」と薫。結構、良い音だった。
夕食の準備をしていた薫が突然。「ヘーゲル弁証法について教えて。」と言い出した。
相変わらず唐突だなぁ。詳しくは知らないが、知り得るところで話す。「じゃ、ヘーゲルよりもプラトンの方が面白そうね!」
まぁそうかもしれん。・・・「エ、じゃプラトンよりソクラテスの方が凄いんじゃない。」
ま、そうかな。それが実に興味深いことに、釈尊、老子、ソクラテスが同時代に出現してるんだよ!「へぇ~」と言ったきり、薫は又
唐突に自分の世界へ帰って行った。
4月17日 雨。
薫「あ~ん、今日も雨!三日目だよ~。」と不服そう。洗濯物の万国旗も飽和状態、部屋の湿度は98パーセント。薫の発言も分からんでも無い。
いつ頃からか、観音は玄関の戸を開ける事を学んでいる。彼女にしては、重たくて
手を掛ける位置も高いところで届かない戸を、中央へ行き中ほどの手の掛かるところを利用して押し開けて置いて、出入り出来る方へ回り引き開ける。なるほど、何てこと無い事だが、これで世界がずっと広がったね。
4月20日
観音とシャボン玉遊びをしようと外に出たが、薫が幾らかシャボン玉を飛ばしただけ。間なしに観音が毛虫を見つけて毛虫取りになり、草取りを始めて、結局、蕗の収穫をしてあがったそうだ。
昼食には、早速 調理された蕗が並んでいた。
4月21日 雨時々くもり。
シャボン玉を飛ばす。両親が飛ばせば、観音も喜んで飛ばすかと思ったのだが、観音は潰す方が面白いらしい。丁度、雨で濡れているので、壊れずに着地するシャボン玉も沢山あった。観音は、嬉々として
それを壊して歩く。
4月24日 くもり時々雨。
今月、町内の月番に当たっており 2度目の配り物と町内会費の集金に先般からボチボチ回る。今日は、薫と観音が西側へ回った。途中で、犬のいるお宅があり、その声を遠くに聞きながら、「ワンワン、ワンワン」と喜んで歩んだ観音だった。が、いざ
目の前で2匹に吠えられて 「ワァ~」と薫にしがみついた。薫が、彼らは繋がれていて、それ以上来ない事を説明しても、観音は「ワァ~、ワァ~」言うばかりで、見ようともしないから駄目だったとの事。ま、そのくらいの方が良いよ。警戒心が無いのは、返って怖い。
4月25日 曇り時々晴れ。
海蔵寺の工事では無いのだが、海蔵寺の所有地内で23日から工事を行っていらっしゃる建設業者の方があり、これもご縁と薫がお茶を支度している。これは、お母さんの時からの「喫茶去」精神らしい。観音も毎日、そのお茶を楽しみにしている。準備や片付け、接待も手伝っている。
とは言え、あちらにも仕事の都合があるので、今日は10時が10時半に3時が4時になり、観音も薫も待ちくたびれていた。それでも、機械の音が止まると、二人とも嬉々として駆け出す。明るい声が本堂でこだまする。
カウンターが8000を超えていた。「きっと雨が続いたからだわ」と薫。雨の日を挟むとカウンターが急に上がっていると言うのが薫の観察結果らしい。
4月26日
散策の途中、薫が木の葉の繊維部分だけに成ったものを見つけて喜んでいる。幽雪
「もっと綺麗に繊維だけにしたのを頂いて持ってるよ」とつい言ってしまう。薫は
「自然に出来てるから良いんじゃない!この微妙な残り具合が又、良いのよ。」と言われてしまった。薫は、「空をバックにするととっても良いわ。」と天にかざして悦にいっている。
4月27日 晴れ。
気温が高い。観音も薫も、何時の間にか裸足で草取りをしている。
4月29日 晴れ。
薫を訪ねて下さった突然の来客に、観音も大喜び。観音より少し大きいお孫さんを伴っていらしたので、お友達の登場と言ったところだったのだ。2人とも
まだまだ握手は上手に出来ないけど、お別れの時には
観音は大サービスで、お花を摘んで プレゼント。バイバイ、バイバイ!2人の手には、紫蘭の花が揺れていた。
本堂の雑巾がけをする。観音も自分用の雑巾を出してもらい、せっせとバケツ通いをしている。拭いているより、雑巾を洗っている方が長い。